新型コロナウイルスの感染は、ますますひどくなってきた。ワクチンを接種した人の数は、ずいぶん増えたのに、ウイルス感染は止まらない。変異株のせいか。
ワクチンを接種して、2週間たった後でも、感染する人が出てきた。そのような感染をブレークスルー感染というのだそうだ。
この言葉を聞いて、ずいぶん変な言葉だなあと思った。ブレークスルーは日本語に訳せば「突破」である。ワクチンを突破したウイルスということだが、これはウイルスの立場に立った表現だ。人間サマの立場には立っていない。
ブレークスルーを辞書で引くと、「難関突破」、あるいは「既存の技術、常識からの飛躍を含むような革新」とあった。研究上の大発見を意味する言葉であり、賛辞の言葉だ。ワクチンに負けず感染するウイルスさんをほめそやす気なのかなあ。
ブレークスルーのよい例は、山中伸弥博士のiPS細胞の発見である。
人間などの体は、一個の受精卵からスタートとして、細胞分裂を繰り返して、出来ていく。その過程で、細胞は、いろいろな細胞に分化して、臓器ができる。脳の細胞、肝臓の細胞、皮膚の細胞・・・と分化していく。いちど分化した細胞は、もとにもどれない。
分化した細胞から、もとの受精卵のような細胞がつくれるか、多くの学者が試みた。もしも、それができれば、臓器の再生などに応用できるからだ。しかし、出来なかった。
山中博士は、すでに分化した細胞に、ある遺伝子を組み込むことによって、いろいろな生体組織に成長可能な細胞を作り出すことに成功した。これが、iPS細胞である。まさに再生医療研究のブレイクスルーとなった。
ブレイクスルーになりそこなった研究もある。小保方晴子博士のSTAP細胞である。小保方博士らは、細胞に弱酸性の液に浸すなどの刺激を与えると、分化する能力を獲得できると主張した。これもブレークスルーとなる研究と思われて、大騒ぎになった。しかし、どうやら間違いだった。
研究の間違いはよくあることだ。でも、はしゃぎすぎたのがよくなかったと私は思う。小保方さんに実験衣の代わりに割烹着を着せたりした、まわりの人たちの責任は重いと思う。
天の声「ウイルス感染から脱線したな」