お役所がハンコをやめる方向だと聞いた。それでハンコ屋さんが反対しているそうだ。私たちの日常生活には、まだハンコは必要だが、確かにその機会は減っているように思う。
たとえば、銀行だが、むかしは預金を下ろすのにハンコが必要だった。それが、いまはATMで、暗証番号にとってかわった。しかし、たまにハンコが必要なときがある。そうすると、どのハンコを使って預金を始めたのかわからなくなってしまい、困ることがある。
暗証番号やパスワードだって、忘れてしまう。特に、このごろは、いくつも必要になってきたので大変だ。生年月日や電話番号を使ってはいけない。1234のようなものもダメ。それに、しょっちゅう変えた方がいいという。同じものの使いまわしもいけない。
これでは記憶力の限界を超える。どこかにメモしておかなければダメだ。でも、どこにメモしたか忘れてしまう。
むかし、脇英世さんの書いた「悪魔のパスワード」という本を読んだことがある。30年か40年前のことだと思う。この本を読んだことは覚えているのだが、中身は全然覚えていない。その当時は、私はパスワードというものを知らなかった。だから、なにがなにやら、わからなかず、記憶に残らなかったのだと思う。
あれから、世の中は変わってしまった。パスワードだらけ。何をするにもパスワード。これでは、「悪魔のパスワード」でなくて「パスワードは悪魔」の時代になってしまった。
死んだときに、遺族は残された預金の暗証番号がわからなくて、困ることはおこると思う。どうすればいいのだろう。
なまじ、遺産など残さず、生きているうちに使ってしまうのがよさそうだ。息子よ、ゴメン。
天の声「残したくても残せないだろ」