遺伝子の本体はDNAで、遺伝情報はA,G,C,Tという4種の塩基の配列順序として貯えられている。その情報はRNAに転写され、さらにタンパク質の20種類のアミノ酸の配列順序に翻訳されて、様々な生理機能を発揮する。
 DNAのA,G,C,Tの配列を音符に変えてみようというアイディアが日本の科学者によって提案された。1984年のことで、国立がんセンターの林さん、宗像さんによってである。Gをレ、Cをミ、Tをソ、Aをラに対応させて、ある遺伝子の一部を音符に変えてみると、ちょっと哀愁を帯びた、魅力的なメロディーが得られたそうである。
 遺伝学者の大野乾さんは、これをさらに発展させた。
 大野さんはAをレとミ、Gをファとソ、Tをラとシ、Cをドとレに対応させた。それぞれを2音に対応させることによって、1オクターブを満たすことができた。2音のうち、基本的には低い音を使い、メロディーのつづき具合で、時には高い音も使うことにした。
 そうやって作った音楽は、遺伝子音楽と呼ばれ、実際に演奏会で、大野さんの奥さんがピアノで奏でたという。
 DNAの塩基にはAGCTという4種類しかない。そのままでは1オクターブには足りない。満たそうと思うとちょっと無理な操作をしなければならない。またAGCTをドレミファのどれと対応させるのかというときに、理窟がない。
 ところが、タンパク質は20種類のアミノ酸からできている。1オクターブを満たすのに十分である。それにアミノ酸はそれぞれ個性的なので、たとえば水になじみやすさの順に並べて、ドレミファと対応させてみるなど、理窟を付けた対応が可能だ。
 そこで、私はタンパク質をメロディーに変えることを試みた。しかし、私はオンチなので、アミノ酸配列順序を楽譜に変えても、メロディが頭の中に浮かんでこない。これじゃダメだ。
 しかし、私は今でも面白いアイディアだと思っている。音楽に強い方が興味を持って、タンパク質メロディーに挑戦してくれることを期待している。

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です