ジャンピング・ビーンという不思議な豆に、大昔、アメリカ留学中に出会った。大豆をちょっと小さくしたくらいの、何の変哲もない豆である。それが、飛び跳ねるのだ。
飛び跳ねるというのは、ちょっとオーバーかもしれない。ゴロンゴロン動き回るのである。よく見ても、仕掛けはない。穴も開いていない。不思議である。
アメリカから帰国するときに、西部を旅行した。そのときに、どこかの売店で見つけて、買って日本に持ち帰った。植物の防疫法で、本当は持ちこんではいけないことを後で知った。ごめんなさい。
日本の大学の研究室に持っていったら、みんな興味津々。なぜ動くのか、議論が始まった。熱膨張率のちがう部分があって、温度変化に伴ってひずみができ動くのではないかとか、バネのような弾力のあるものが仕込んであるとか、いろいろな説が出たが、本当のところはよくわからない。
しばらく遊んでいたら、動かなくなってしまった。どうしたのかな、思ったら、また動くようになった。やがて、手のひらで温めたり、陽に当てたりすると、動きが活発になることがわかった。
そのうちに飽きてきて、机の上にほったらかしにしておいた。ある日見たら、豆に穴が開いていて、動かなくなっていた。
どうやら、豆の中には、虫が入っていたらしい。調べると、豆はメキシコ原産のセバスチアナという植物の豆で、その中にガが小さな穴をあけて卵を産み付ける。卵が孵化して幼虫になると動き回る。そうして、豆が動くことになるという。
世の中には不思議なものがあるものだ。アメリカでは、今でも売っているのかなあ。