コロナウイルスのワクチンに関心が集まっている。新型コロナ感染の収束の切り札と考えられているからだ。
 アメリカやイギリスではワクチンの開発に成功し、実際に人への接種が始まっている。ロシアや中国もそれぞれ自国でワクチンを開発製造しているらしい。
 日本はどうかというと、開発は試みたけれど、実用化には至らなかったようだ。ワクチンは外国からの輸入に頼らざるを得ない。しかし、相手国の都合で、いつ入るのかはっきりせず、皆やきもきしている。
 日本の高い医学・薬学の水準から考えると、なぜダメだったのだろうかと考えてしまう人も多いだろう。GoToプロジェクトなどに予算を使わずに、コロナウイルスワクチンの開発に、カネと知力を集中すべきだったという意見もある。
 だが、私は日本がワクチン開発に失敗して、なんだかホッとしている。
 もちろん失敗を喜んでいるわけではない。へたに”挙国一致”などにならなくてよかったと思うからだ。
 まかり間違って、「すべての科学者は、ワクチン開発に全力で取り組め」なんてことになっては困る。
 もちろん、お金も労力も無限にはない。でも、”選択と集中”とかいって、科学者みんなを同じ方向に向かせようとするのはよくない。そうなると、必ず基礎的科学は冷遇される。一見、役に立たないからだ。
 しかし、将来の人間社会を豊かにしてくれる知識や技術の芽は、今は何の役にも立たないように見える研究のなかにあるかもしれない。
 老科学者はただ傍観するだけだが、コロナウイルスワクチンの開発競争を見ていて、こんなことを思った。
 しかし、ある現役の先生にきくと、コロナのせいで研究室のアクティビティは、いままでの30%ぐらいに落ちてしまっているという。
 これも困る。やっぱり、憎きはコロナウイルスだ。


 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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