引っ越しの準備で、泣く泣く処分した文献コピーの中には、コラーゲン食品に関するものがいっぱいあった。
 25年ぐらい前から、コラーゲン(正確にはコラーゲンの加水分解物)を食べると、肌がプルプルになるとか、関節痛が治るとか言われだした。やがてコラーゲン健康補助食品は一種のブームとなって、テレビや雑誌に盛んに取り上げられるようになった。
 しかし一方では、多くの学者・専門家は「体験談ばかりでは信用できない」「コラーゲンを食べても消化管の中でアミノ酸に分解されてしまうのだから、特別な効果を期待できるはずがない」と批判的だった。
 定年後の私はこの問題に興味を持って、研究の推移を見ていた。
 確かにはじめのうちは人気ばかり先行して、学問的根拠に乏しかったのだが、研究は着実に進んでいった。
 効果については、二重盲検法による臨床試験の結果、効果があるという報告がいくつも出された。
 そして、コラーゲンを食べると、体内に生理的な活性を持つ小さな断片が現れて、これらがいろいろな効果のもとになるということもわかった。すごく面白い。
 最近になって、コラーゲン食品が認知症にも効果があるという論文も出た。
 「飲んでみないか」とかみさんに言ったら、「おことわり。あたしはマウスじゃないの」。たしかヒトに対する試験の報告もあったような気がするけれど、文献捨てちゃったからなあ。


 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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