私がフグをはじめて食べたのは、大阪の知人がご馳走してくれた時だ。「てっさ」と「てっちり」を食べに行くといわれたが、何のことだかわからなかった。「てっ」とはフグのことで、てっぽう(鉄砲)からきていると説明してもらった。あたると死ぬということ。「てっさ」はフグの刺身、「てっちり」はフグの鍋料理だった。
 東京の大学を定年になったあと、下関の大学に拾ってもらった。通信制の大学院大学だったので、リモート授業で、大学に行くのは、年に3回ほどだった。それでも、下関には、たびたび行った。
 下関といえば、フグが有名である。教員の懇親会は、フグ料理屋でということになって、立派な料亭というか旅館に連れていかれた。そこに入るのかと思ったら、その隣の小さな料理屋に入った。隣の立派な建物は伊藤博文の愛した店で、高い。こちらは、同じ経営者がやっているけれど安いと、幹事の先生が説明した。
 下関のもう一つの名物はクジラだ。下関は、むかしはクジラ漁の基地だった。今はクジラは基本的には獲ってはとってはいけないはずだが、調査のためなどで獲ることがあって、それが食用にまわってくるらしい。クジラ料理屋に連れて行ってもらって、クジラのいろいろな部位をご馳走になったことがある。
 貴重な部位だそうだが、なにか忘れてしまった。珍味を食べても、すぐ忘れてしまうので、私はグルメにはなれない。
 クジラは、戦後牛肉や豚肉がないときに、代わりに、たくさん食べた。あまりおいしくなかった。その印象が強く残っていて、どうも好きになれない。
 富山に行った時に、知人にホタルイカをご馳走になった。ホタルイカは珍味である。そのとき、ホタルイカの眼玉を集めた料理もご馳走になった。これぞ、珍味中の珍味だそうだ。
 でも、どんな味だったか、記憶にない。やっぱり、私はグルメ失格である。

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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