私はクラシック音楽のことをあまり知らない。昔、かみさんに連れていかれて、何度かクラシックの演奏会に行ったことがあった。しかし、咳ひとつ許さない演奏開始前の雰囲気や、拍手する場所もわからない己の無知さから、とてもなじめないと思った。
 しかし、年をとって、ぼんやり過ごすことが多くなると、ラジオのクラシック音楽を聴くようになった。NHK・FMの「クラシック・カフェ」をよく聴いている。
 作曲家の中で、誰が好きかというと、これが難しい。コリン・デクスターの推理小説の主人公、モース警部は、酒とクラシック音楽とクロスワード・パズルが好きだが、ワグナーが最高だといっている。しかし、私は好きになれなかった。
 ある映画の中で、主人公が「ベートーベンは単純だ。ドビュッシーの方がいい」といった。そこで、ドビュッシーを聴いたけれど、やはり好きにはなれなかった。
 「もう一人のバーナビー警部」という推理ドラマの中に「交響曲第9番の呪い」というのがあった。てっきりベートーベンの第9と思って見ていたら、マーラーの第9であった。自分の浅薄な知識が恥ずかしかった。でも、マーラーも好きでない。
 ちょっとおこがましいのだが、私はメンデルスゾーンが好きだということにしている。ヴァイオリン協奏曲を聴いて、素晴しいと思ったからだ。気品に満ちている。
 クラシック音楽を、格好つけて、聴くのは性に合わない。これからも、ぼやーとしながら聴いていたい。
 ちなみに、アメリカ人はバッハのことをバッハといわない。バックという。モーツァルトはモザートだ。
 「ベートーベンはイヌの名前だと思っている」 これは、アメリカのテレビドラマに出てきたジョークだ。昔ベートーベンという名前の、大きなイヌが主役の映画があった。面白い映画だった。