秋になって、コオロギの鳴き声が聞こえてくる。コオロギは、みんなに愛されている。
コオロギの声を聞いていると、カマドウマのことを思い出した。コオロギの近縁の昆虫なのに、鳴かない。羽根が無くて飛べない。そして、人に好かれない。
カマドウマは、暗い場所に群棲している。台所やトイレの隅など湿気の多い場所が住処だ。別名はベンジョコオロギ。気の毒な名前だなあ。
そんな可哀そうなカマドウマだが、古くは「いとど」と呼ばれ、また俳句の題材になってきた。例えば、
かまど馬まさしく父の貌だった 味元昭次
銀河鉄道終着駅の竈馬 高野ムツオ
一跳びにいとどは闇にかえりけり 中村草田男
品川過ぎいとど舞い込む終電車 松崎鉄之助
かまど馬ひとりに広き湯槽かな 村田砂田男
天の声「また、他人の俳句に頼ったな」