エラスチンにも架橋成分が存在する。弾力のある繊維をつくるためには、架橋が必須である。実はコラーゲンの架橋の研究よりも前に、エラスチンの架橋の研究は進んでいた。
エラスチンの主な架橋はデスモシンとイソデスモシンで、1960年代にパートリッジらが見つけ、構造を決定した。リジン4個が縮合してできたピリジン環を持っている。
私たちが研究したコラーゲンの架橋成分ピリジノリンとは共通する点が多い。というか、ピリジノリンの構造や合成経路の研究のお手本は、デスモシン、イソデスモシンの研究であった。彼らの論文を読んで、これをそっくり真似て研究を進めた。
コラーゲンには、ヒドロキシリジンが存在している。ヒドロキリジンが架橋の形成に参加すると考えていくと、デスモシン・イソデスモシンの類推から、ピリジノリンの構造が、おのずから浮かんできた。それを、NMRなどの機器分析によって確認した。
デスモシン・イソデスモシンの研究は、ピリジノリン研究の本当に良いお手本だった。感謝している。
デスモシンという名前は、ギリシャ語のデスモという言葉に由来だそうである。デスモは英語で言うとbandという意味だそうだ。一方、ピリジノリンはその化学構造から名付けた。
天の声「教養の差がわかるな」