先日のヤフーニュースに、鳥取県のスーパーで買ったイワシの刺身を食べた人が、アニサキス中毒になったという記事があった。
アニサキスは、カイチュウと同じく線虫の仲間である。クジラやアザラシなどの海産の哺乳類を最終の宿主とするが、幼虫は、アジ、サバ、ニシン、スケトウダラ、スルメイカなどに寄生する。
アニサキスの幼虫が寄生した魚を生で食べると、激しい腹痛や嘔吐が起こる。幼虫が人の胃壁などに入り込むからだ。ひどい時には、腹膜炎を起こすなど、重症になることもあるという。
対策としては、アニサキスの幼虫のいる魚は生で食べないこと。焼いたり、煮たり、あるいは―20℃で冷凍保存すれば、死滅する。
大昔、ある水産会社の方が、サバの内臓の抽出液が、がん細胞を死滅させる作用があることを見つけて、私たちの研究室に相談に来られた。そこで、同僚が研究することになった。
同僚が調べていくと、サバ内臓のガン細胞死滅作用は、アニサキスの幼虫の感染の度合いと関係があることがわかった。さらに調べると、アニサキスの幼虫は宿主の魚の内臓にカプセルをつくり、その中に住んでいるのだが、そのカプセル中にがん細胞死滅作用のあるタンパク質が存在していることがわかった。
とても不思議で、面白い現象である。
アニサキス幼虫のつくるガン細胞死滅タンパクは、残念ながら人のがん治療に応用はできていない。