5年ぐらい前のことである。かみさんと私は、ある会合に出るために、都心に行くことになった。少々肩が凝る会で、疲れてしまいそうなので、埼玉県の我が家に帰るのをやめて、都心のホテルで泊まることにした。
会がおわって、ホテルに帰るため、タクシーをつかまえようとしたが、なかなかいない。たまたま、そばに老人夫婦がいた。その人たちも同じ会に出ていて、やはりタクシーをつかまえようとしていた。私たちと同じホテルに帰ることがわかり、相乗りすることにした。
ご主人の方は、昔は、山梨の大学の数学の先生であることがわかった。
やっと、タクシーに乗ることができて、都心の道を走っていった。どこだか、わからないのだが、ある大きな建物のそばにくると、老人は言った「孫娘が、この会場で、試合をしたことがある!」
それから、もと数学者の先生は、孫の話をはじめた。卓球の選手であること、日本の女子卓球では5本の指に入るか、入りそうであること・・・
これはすごい。孫が、スポーツ選手で、日本でランクが5位以内に入りそうなんて、これは自慢するのも、無理はない。私たちは、感心して聞いていた。
奥さんの方は、無口で、ひとこともしゃべらなかった。我が家とは、反対だ。
タクシーを降りて、ホテルのフロントで、その人は「平野」と名乗った。つまり、お孫さんの卓球選手とは平野美宇さんだったのだ。
かみさんも私も、あれ以来、平野美宇さんを応援している。
いま、この東京2020オリンピックで、平野美宇さんは、女子卓球の団体戦で大活躍している。
私たちもうれしい。あのお祖父ちゃんは、もっと喜んでいるに違いない。