「失敗は成功のもと」、「失敗から予期せぬ発見が生まれる」・・・こんなエピソードを探してみた。
まず、グロス博士のコラゲナーゼの発見である。
コラーゲンの分子は、特殊な3本らせん構造を持っているため、ふつうのタンパク質分解酵素は、分解することができない。体の中には、コラーゲンを分解できる特殊な酵素「コラゲナーゼ」があるはずだ。しかし、細菌には見つかったが、動物ではなかなか見つからなかった。
グロス博士らは考えた。オタマジャクシがカエルになるときには、尾が消失する。尾の主成分はコラーゲンなので、コラーゲンを分解する酵素が活発に作用しているはずだ。
しかし、オタマジャクシをすりつぶしてつくった抽出液には、コラゲナーゼ活性は検出されなかった。
そこで、オタマジャクシの組織を、コラーゲンで作ったゲルの中で培養してみた。組織を培養するときには、培地に動物の血清を加える。ところが、たまたま血清が手元になかった。ダメもとでやってみると、組織の周りのコラーゲンが見事に溶けた。
こうして動物のコラゲナーゼは見つかった。血清の中には、コラゲナーゼの働きを阻害する物質があるので、今まで見つからなかったのだ。もしも血清が手元にないという「失敗」がなかったら、この発見はなかった。
ペニシリンの発見も、フレミング博士の失敗の実験がもとになっている。博士は、細菌をシャーレで培養していた。ある日、カビが混入してしまった。見ると、カビの周りが透明になっている。博士は、カビが細菌を殺す物質を分泌していると考えた。それが、ペニシリンの発見につながったという。カビの混入は普通は失敗だが、それを大発見につなげてしまった。フレミング博士は、ノーベル賞をもらった。
胃潰瘍などを引き起こすピロリ菌にも、似た話がある。ウォーレン博士は、ピロリ菌を培養しようとしたが、なかなかうまくいかない。2日間培養しても増えてくれない。ある日、培養しているのを忘れて、休暇をとってしまった。5日後、もどってくると、菌が増殖していた。ピロリ菌が増えるのには、4日もかかるのだ。ピロリ菌が培養できるようになって、研究が進み、ウォーレン博士も、ノーベル賞に輝いた。
失敗は成功のもとである。失敗してもいい。がんばろう。
天の声「そんなことを安易に言うな」